可愛い女の子たち ~3連戦2日目~

一見誰に対しても明るい性格の人は、元々の暗い一面を隠したいがために明るく振舞っているかもしれません。逆に、暗く見えてしまう人はというと、自分が明るくいることが罪なのであるという心理がどこかに働いているのかもしれません。

 

 

 

『表裏一体』

人や物事は「二面性」を含有しています。天と地、男と女、コインの裏と表などが存在するように。

 

 

 

『二面性』

ナンパや恋愛における二面性を説明した方がわかりやすいでしょう。例えば。「君って周りから頼られて相談されるタイプだけど、自分だってめちゃくちゃ相談したい時もあるよね。話を聞いて思ったよ。だから、君は頼りがいがあると思われがちだけど、それは本当の君じゃないもんね。本当は思ってるよりずっと繊細な心の持ち主なんだよね。」

 

 

 

恋に落ちる時なんかもそう。例えば「ギャップ」。これもまた二面性が垣間見える瞬間です。普段はクールな子が、ふと子犬を見て甘えるような可愛い声を出すのを聞くとキュンときます。一見あほっぽくて抜けてそうな、見ていて危なっかしい子が、目の不自由なおばあちゃんが横断歩道を渡るのを手伝っているところを見るとこれもキュンときます。

 

 

 

本来の自分とPUAの自分。これは同じようであって同じではありません。女の子とご飯に行けば絶対に口説く。そういう自信も兼ね備えたPUAの自分です。

 

 

 

PUAたるもの、常に自信に満ち溢れた状態でいるべし。

 

 

 

今回はそんなお話。

 

 

 

_____________________________________

 

 

 

 

今回登場する彼女は最近ストリートで声をかけた子。その時はめちゃくちゃ警戒心が強く何度もグダられ、かなり深い自己開示をした結果なんとか番ゲができた子。年は24歳。服装のセンスがよく、その色使いもかなりいい。

 

 

 

「お待たせしてすみません。なんとか番ゲできました。」

「いえいえ。めちゃくちゃ話し込んでましたね。でも賢人さんずっと笑顔でしたね。」

こう話すのは僕と講習生だ。講習中、声掛けの見本を見せてほしいとのことで声をかけた。僕は彼女の警戒心を和らげるために多岐にわたる自己開示と満面の笑顔で戦った。

 

 

 

来る女の子とのご飯の日。待ち合わせは彼女の予定が終わった後の22時だ。友達とカフェに行ってきたらしい。彼女と合流し行きつけの店へと向かう。その道中なにやら騒がしい。消防車がサイレンを鳴らしているからか。街の人たちの声を聞くとリアルタイムで火事らしい。

 

 

 

マンホールみたいなところにポンプを差し込むところを生で初めて見た。件の店の前を通り過ぎたが特に目立った火は出ていないようで、まだ消化活動は行われていない。

 

 

 

その道中、僕自身もサイレンの音が間近すぎたため少し不快な音だなと思っていると、彼女もそう感じていたのか、それとも別の意図があったのかは知らないが、僕のコートの袖をつかんで何食わぬ顔をしている。一体なんなのか。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

この店は2日連続だ。いつもと同じ店員さん。扉を開けて、僕のことを認識した瞬間の微妙に変化した表情は見逃さない。ちょっとにやけるのはやめてくれ。つられて笑いそうになるから。

 

 

 

横並びのカウンターに座り、僕はレモンサワー、彼女はグレープフルーツジュースを頼む。

 

 

 

まずは彼女の性格や思考タイプの推測から。学生時代から現在までおおざっぱにどんな人生を歩んできたか。趣味や習い事。普段休みの日は何をすることが多いか。などを自分も話しながら、質問で会話の流れを作っていく。

 

 

 

彼女には癖があった。自分が本当に真剣な話をするときは、こっちを見ずに斜め前を見ながら話す癖だ。他のほとんどの会話の時はこちらを見て話している。だから彼女がこちらを見ずに話すときの話題に焦点を当てることにした。

 

 

 

「君ってけっこうそうやって周りから相談受けて、人間観察とか分析するのも得意やけど、いざ自分の問題となるとうまく客観視できないでしょ?」

「そうなの。そこまでわかるのすごいね。」

そう。彼女は相談事をよく受けるらしい。

 

 

 

「ふつう女の子ってたいてい話を聞くだけで終わるから、自分はそうありたくはないと思ってるんだ。話ももちろん聞いたり共感したりするけど、本当に大事だなと思ったときはちゃんとアドバイスもするようにしているの。」

これは彼女の信念だろう。そして、そう話すときの彼女の目線はやはり斜め前だ。

 

 

 

そして、これとは全く関係のないあほみたいな話をしたり、ボケをかましたりする。さっきよりツッコミの手が当たる回数が多く、それに伴い距離も近くなった。彼女なりのギラだろう。そして店を出た。

 

 

 

 

_____________________________________

 

 

 

 

 

「正直に言う…君を抱きたいと思ってる。」

「え~」

店を出た瞬間にクロージングの打診。間延びしたような上ずった声で返事をする彼女はまた距離が近くなる。これはOKサインだ。そのまま方向を変え、二人だけの蜜蝋へ。

 

 

 

そう。蜜蝋は火を浴びれば溶けて消えてしまう。僕たちの関係もそうだ。この燃えるような気持ちも、朝目が覚めればすっかり鎮火している。この蜜蝋で起こることはすべて幻。一番距離の近い存在だった二人が、次の日にはすっかり赤の他人同然の道を歩む。

 

 

 

これもまた物事の二面性なのか。

 

 

 

「どの時点で抱かれてもいいなって思った?そもそもなんでアリだった?」

「なんかよくわからないけど、店出たときに抱きたいって言ってきたじゃん?その時かな。賢人君がね、小学生みたいな表情をしてたの。ご飯食べてるときはずっと自信満々な雰囲気だったじゃん?だから、がんばって伝えようとしたのかなーって。」

 

 

 

僕にも二面性があったみたい。

 

 

 

そして余談だが、彼女はベッドではかなり豹変した。AVで聞くような言葉遣いがばんばん飛んできた。極上の笛。うねるような腰使い…

 

 

 

彼女はその行為に没入していた…。その反面、僕はその豹変ぶりに呆気に取られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その二面性は僕は当分持てそうにない。

 

 

 

2日目 完